俳句アラカルト
2018年 11月 10日
俳句アラカルト 清 水 弘 一
黄落の草木の機序に学ばむと
ひでみ
あ ぽあん青山 10月句会 2018-27
鑁阿寺という鎌倉初期の木造建造物(国宝)
が足利市にあります。
樹齢600年の銀杏の大樹があり毎年見惚れる
様な黄金色の葉を茂らせ参拝者を楽しませ
ます。
箱根や尾瀬ヶ原の草原では草草の群れが紅色
や黄褐色に色ずき瑞穂の秋を彩ります。
揚句の作者は樹木や草達の紅葉の美しさを
詠むのではなく、紅葉の美しさの仕組みや
素性そのものに思いをめぐらせます。
秋になると紅葉を愛でるのは自然を愛する
民族の美意識に思いをはせておりましたが、
作者は紅葉の機序こそ学ぶべきことがある
と示唆しております。
機序とは「紅葉の仕組み」だけに言及して
いないことに気付きます。紅葉の仕組み
という事象を通じて、自然界の草木の役割
や恩恵は言うに及ばず、地球や宇宙
そして生命の根源にまで感動を伝えたかっ
たと思わざるを得ません。
機序に学ばむとは、単に俳句や短歌を作る
ばかりでなく、不断の精神の修養の大切さ
をそっと伝え気付かさせてくれます。
散策の途中で、草木の紅葉や自然の移り変わ
りに眼を向けることと同時に自然界の機序、
惹いては歴史観や、世界の政治や経済の動き
にまで目を向けることを勧めて居られると
感じます。
あたりまえに見過ごしてしまう事をしっかりと
見据えた作者の観察眼の素晴らしさに共感し、
俳句の奥深さを感じます。 了。