俳句アラカルト
2018年 10月 11日
金継ぎの杯傾けて今年酒 陽子
山前俳句9月句会より 2018-26
金継ぎの杯と言われますと、数寄屋「茶室」
の数々の粋人に思いが及びます、
お目にかかったことはありませんが、宝塚
歌劇団と阪急の創始者の小林一三翁なら
どの様に御点前をされるか!
岡本太郎や白洲正子なら どの様に持ち
どの様に杯を傾けるか!と想像しますと
お酒も人生もことのほか楽しくなります。
今年酒はその年の秋に収穫したお米で醸造
した新酒の意味です。お酒は寒造りが主流と
思っておりましたので寒の時期に頂くもの
と思っていました。
私の義父は、灘の蔵元と親戚関係にありまし
たので、毎年1月の下旬頃に原酒が届き大切
に味わっておりました。
しかるに、ホトトギス季語便覧での今年酒
(新酒)の季は秋になっています。
何でも速成の時代ですから、季節が早まって
いるのかも知れません。
金継ぎの青磁で思いだすのは安宅コレク
ション(大阪市立東洋陶磁美術館)で拝見し
た南宋時代の国宝の馬蝗絆ですが、これは
金継ぎでなく鎹で止めていたかも知れ
ません。
ところで、金継ぎについて、千利休や本阿弥
光悦や長谷川等伯は金継ぎを認めないと思わ
れますが、北大路魯山人や民芸の柳宗悦な
ら面白いと言いそうな気が致します。
金継ぎを眺めて、たなごころに抱き取って、
唇に当てた触感を新酒がなでるその瞬間を句
に仕立てたものと思います。
男女にかかわらず、気に入りの酒器を慈しみ
新酒を愛でる口福を感じる至福の時を迎えた
喜びが余韻として響いてまいります。
以前 テレビの旅番組に出られた渡辺文雄
さんが笑顔いっぱいにお飲みになるシーン
を想像しています。 了。