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by kodaira220

室町幕府の源流 足利源氏の教養



 足利源氏の教養 ② 清 水 弘 一
 日本のルネッサンスの発祥  


  1. 足利尊氏(1305~1358)の和歌

私は和歌や俳句が好きで、古今の和歌を
楽しんできました。

足利尊氏の和歌の趣味は知っていました。
七百近い膨大な歌が遺されています。

勅撰和歌集には続拾遺集一首、風雅集十六
首新千載集二十二首、新続拾遺集十八首、

新続古今集十二首、さらに、後の編集です
が「等持院殿御百首」が二つあって二百首、

「等持院贈左府御集」は四百三十三首
あります。

今むかう (かた)明石(あかし)の 浦ながら

     未だ晴れやらぬ わが思いかな    
  風雅集より

「中先代の乱」は京都から下向して来た
足利尊氏により鎮圧され、その後尊氏は
東国支配を始めました。
これを後醍醐天皇から逆臣とされ、新田
義貞を大将とする軍勢が押し寄せて
きました。
尊氏は鎌倉浄光明寺で謹慎していました
が、新田勢が箱根に迫ったので、尊氏は
自衛のためとして立ち上がりました。
その後
新田勢を打ち破り、京都を占領し
たが、京は飢餓状態、楠木正成のゲリラ
攻撃と奥州北畠の軍勢が押し寄せてきた
ので、海に逃れて九州に向いました。

この途中、兵庫三草山から明石へ抜ける
大蔵谷で詠んだものです。素直に尊氏の
心が映しだされて
います。 

尊氏は朝晩と行動の前後に、和歌を詠む
余裕を持ち続けていたようです。
負け戦の危機にあっても、たしなみとして
歌を詠んでいたのです。

  入相(いりあい)は ()(ばら)の奥に ひびきそめて 

     霧にこもれる 山ぞ暮れゆく 
風雅集より

夕暮を告げる鐘が 檜原の奥の寺で鳴り始
めた。その鐘の音に誘われるように、霧に
包まれた山が次第に暮れてゆく。
おくやまの静かな夕暮の景色が浮かび出て
くる歌です。 迷いの消えた尊氏の心です。

昭和三十年に『足利尊氏』を出版した高柳
光寿氏(日本歴史学会会長)が等持院贈左
府御集の中から掲げた10首より2首を
転載します。

  池水の ひしの浮きはに とぢられて

      影みぬ岸の 山ぶきの花

  池水に もふしの鮒や みだるらん

      蓮のうきはの ゆるぎ立ちぬる

池水の実景の二首ですが、平明な描写から
尊氏の素直な人間性が伝わってまいります。 

2018/2/26日 両毛新聞 掲載  ー続くー









by kodaira220 | 2018-03-09 11:07 | 足利アラカルト