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バック・パッカーの一人旅をお勧めします。


by kodaira220

ミルフォード・トラック

   ニュージーランド南島編
   ミルフォード・トラック

   世界で最も美しい散歩道の異名を持つミルフォード・トラック
   はニュージーランド南島の南西部 フィヨルドランド国立公園の一角を占める。
   全長54km そのコースを専門ガイドと所定の山小屋を利用して4泊5日で歩く。

   3月18日午前9時30分クイーンズ・タウンを出発した参加者42名とガイド4名は
   テ・アナウ湖畔のホテルで昼食の後、バスでテ・アナウ・タウンズへ移動。
   そこからテ・アナウ湖の最北端グレイド・ワーフ迄1時間の船旅をする。
   
   
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   通常のトレッキングは草原や山間部を歩くのみであるが、ここミルフォードは往路
   と復路にクルーズが組み込まれる変化にとんだコース・レイアウトとなっている。
   氷河の雪解け水をたたえるフィヨルドの湖面には冠雪に彩られた山や氷河を
   頂く山々が眼前に圧倒的な迫力でせまり来て、後方へしりぞく。
   また遠望する景観が手の内にパノラマとして広がる。
   
   
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   グレイドハウスに上陸

   ミルフォーフォの空は青く、清涼な空気は日本の高原の風情で足慣らしの歩行は軽い
   この軽快感が第一の失敗となる。

   歩き始めて20分程の山小屋に立ち寄る人の群れもいるが、クリントン川の清流に
   気を取られ、周りの植物に目を取られ 思わぬ距離を歩いてしまっていた。
   気が付けば、二日目にトレッキングするコースの三分の一も歩いてしまった。
   戻る途中で、探しに来てくれたガイドに迎えられる。
   夕食の時間に間に合ったものの団体行動の初日からロスコ君に迷惑をかけた。

   グラス片手にラウンジで歓談中の参加者の群れに入り夕食を頂く。
   食後、集会の会場に移り、若きガイド4名からスライドを使って全コースの詳細な
   説明を受け、1880年代から1900年代後半の写真で開拓当時の様子を知る。
   入植当時の女性がフレアー・スカートで、荷物を持つのは全て男性の仕事で
   あったことは特に興味深かかった。 

   今回 何より幸いであったのはガイドの一人がヒロさんという28歳の日本人で
   当初聞き取りにくいニュージーランド英語の説明を逐一日本語で補足してくれた
   ことである。このヒロさんから国別に自己紹介と各国で歌を披露するよう依頼される。

   参加メンバーは地元ニュージーランド6名、オーストラリア23名、アメリカ5名、英国
   2名、日本6名の計42名。ガイド4名。 各国代表? とも元気溌溂と自己紹介をし
   又 歌声が流れた。イギリスの夫妻の分かり易い英語の挨拶とボーイ・スカウトの
   歌の後、日本人グループの出番となった。

   6名の混成チームは互いに見知らぬ同士だったので、最年長の私から「名前は
   KOICHIですが、発音しにくいのでCOACH(車)と呼んでください。 TAXIとは
   呼ばないで下さい」 古いギャグだが予想外に受けた。次に「定年退職し、その後
   ガラスの研修を終えて、ガラス工房を持ってガラスの工房を持つ自由業」と現況を
   説明。但し、「私の先生から 西洋と中国のガラス工芸の模倣的なものを創らない
   様にと指導を受けているので、未だ一個も作品が出来ていない。」と述べると
   下手な英語のスピーチにもかかわらず多くの拍手を頂いた。

   大阪から参加の母娘のお嬢さんが「一度就職したが、一念発起して 看護婦の道を
   えらぶべく国家試験を受けて、その結果待ちの時期にこのトレッキングに参加た」と
   述べると 大きな拍手とガンバレや絶対受かるよ! と温かい励ましを受ける。
   お母様は趣味の話。 一人参加の会社員から手慣れたスピーチ。北大と京大の
   学生兄弟がスピーチを締めくくり、全員何とか英語圏の参加者とのコミュニケーション
   のソフト・ランディングを果たした。

   我々が恐れ気もなくスピーチ出来たのは、ガイドのヒロさんの「今までの日本からの
   参加者は余りしゃべらない人が多かったので、とにかく長くしゃべって下さい」との
   励ましの効用であった。夫婦やグループ参加の場合は誰か一人が語っても支障ない
   ので、単純にトレッキングだけを楽しむことも全く問題ない。

   二日目 グレイトハウスを8時45分出発。 ポンポローナPompolona小屋までの
   16kmはクリントン川の水の音を聞き、ブッシュロビン他数種の野鳥が手招きする
   様に寄って来たり、枝の上を跳ねるのを見る。左右の山並みは切り立った岩肌を見せ
   空の青き濃淡をまじかに引き寄せる。

   ヒレレHirere滝で昼食のサンドイッチを食べていると、足の短い体長50cm程の鳥
   ケアKea(オウムの仲間)が ねだると言うより隙あれば横取りしようと狙う。知能は
   かなり高く、チンパンジーに匹敵すると説明を受ける。歩くコースの両端は切り立った
   岩肌の絶壁であるが、歩む道は比較的平坦で歩きやすい。
  
   
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   氷河の雪解水が滝となりU字谷に注ぐ

   到着した山小屋には10人のスタッフが居り、食事から掃除・小屋の管理・手入れ
   までまかなう。衣類や靴の感想室は別棟に用意されている。建物は簡素であるが
   個室にはトイレ・シャワー・洗面台が揃い清潔感に溢れる。夜はかなり冷え込むので
   スティームの暖房が完備されている。 又 昔懐かしい湯たんぽ(日本の赤褐色の
   ゴム製の氷まくらを円筒状にした物)が常備されているのでお湯をいれ往時を偲ぶ。

   三日目 霧のような小雨の中 午前7時40分出発。 クリントン渓谷の上流への平坦
   な道が続く。 マッキャノン峠MackinnonPass(最高地点 1,154m)を越える登り坂
   は日光のいろは坂のごとくジグザグに登る。
   
   
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   徐々に天候が変わり、 山肌を縫うように霧が山頂を目指して湧く様に上り始める。
   山頂の頂上部では待ち受けた女性ガイド ブリアーさんから温かいホット・チョコレート
の歓待を受ける。

   外気温は高度に合わせ下降をたどり、頂上付近では零下まで下がっていたであろう。
   晴れていれば、ここマッキンノン峠からの眺望は 氷河を頂く山稜の絶景が堪能出来た
   であろうが、薄い霧につつまれた視界はありふれた低山の様相であった。

   霧と小雨に濡れた雨具を峠の小屋で乾かしながら、朝食後に作った手作りのサンド
   イッチや果物を食べる。 昼食後装備を整えたグループから数名づつ峠の下りとなる。

   第二の失敗 昼食後 雨に濡れ、冷えた衣類のまま出発したので、寒さから膝の負担が
   増したのであろう。古傷の右膝をかばっている内に、正常な左膝に違和感が忍び寄る。
   やむなく、クインティン小屋に到着後のサザーランド滝(落差580m)の見学予定を
   断念する。夕食時のワインも、夕食後のワインも若干 味が落ちて感じられた。

   四日目 昨日に引き続き朝からの小雨の中を出発。
   歩き始めて2キロ程の地点から、懸念した膝が反乱を始め硬直して曲げることが出来
   なくなる。岩登りの「三点確保」ではないが、左足とストック2本での歩行となる。

   この日は終日雨で、U字形の谷から見上げる両側の絶壁は往路 数条の細い滝で
   あったものが 絶壁の全てが滝となり滝つぼの飛翔をあげる。
   山道はところどころに小さな小川として流れていたが、何時しか道そのものが小川と
   化していた。流れの速い川の手前で女性の参加者が立ち往生しているのを見ると、
   ガイドのクラウディーナさんが直ちに川に入り、腰まで水につかり 女性の手を握り
   横断歩道の女性の手を引くように川を渡らすことが出来た。

   参加の女性の手助けはできなかったが、何とか自力で下山を果たすことが出来た時
   有森さんの名言に倣い自分を褒めてやった。

   ミルフォード・サウンド行の船に乗り込むと、濡れた雨具の仲間達で混み合う船内は
   立錐の余地もなくなる。  すると突然、ガイド3名が雨が降りしきる船室を出てデッキ
   に座り、楽しそうに歌を歌いだした。打ち合わせもないであろうに、いとも自然に振る
   舞う。 何時も心配りを怠らない多国籍のガイド達 そんな小癪な彼ら・彼女らを
   見ると感動のうれしさがこみあげて来る。

   ツアー最後の晩餐は日本人6名でテーブルを囲み、ヒロさんを加えた7名全員
   日本語での会話を満喫する。通常は誰彼となく英語のみの会話であった。
   マイター・ピーク・ロッジのフルコースの夕食は絶品でワインもニュージーランドと
   オーストラリアのワインがくつわを並べている。 我々は衆議一決 オーストラリアの
   カベルネ・スービニオン種とニュージーランドのリースリングを選択堪能した。

   夕食後は全員に完歩証の授与が行われた。女性ガイド二人は、女性のみならず、
   男性ゲストにも快く抱擁し完走を祝福する。たくましい男性ガイドは、感動して抱き
   ついてくるゲストを大らかに受け止め、大いに盛り上がりを見せる。

   ツアー参加の感想とガイドへの感謝のスピーチを考えていたが、ダビッド・ストッカー
   氏に先を越されてしまった。

   五日目 昨日の雨天をあざ笑う様に快晴。朝食後2時間のミルフォード・サウンド・
   クルーズを楽しむ。マイターピークMitre Peak 1694mは湖面からそそり立つ。
   フィヨルドを取り囲む銀嶺たちが、鏡と化した湖上に反射して、もう一つの同じ
   景色の世界を映し出す。   ミルフォード・トラック 了。
   




   

   
by kodaira220 | 2014-02-11 11:29 |