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バック・パッカーの一人旅をお勧めします。


by kodaira220

俳句アラカルト

 俳句アラカルト 清水弘一 


 
餅に入れ歯二進三進いかんぜよ 久一




正月に鏡餅を供えますし、三が日にお雑煮餅

神棚と仏様に上げていました。



その鏡餅は鏡開きの日(武道では十一日)

に食べます。

小学生の頃、柔道の寒稽古が終わるとお汁粉

が待っています。お汁粉の餅を十一個食べた

同級生がおりました、現代の早食い選手権者

です。



二進三進は「にっちもさっちも」と読みます

ので、諧謔味が生まれます。



いかんぜよ は土佐弁でしょうか?

坂本龍馬は若くして亡くなっていますので、

入れ歯はないでしょうから、これは

作者の年齢からの実感と思います。



私は正月ならずとも毎日朝食に餅を食べて

います。餅の誤嚥が増えておりますので

目下入れ歯ではありませんが十二分に

気を引き締めて参ります。了。






# by kodaira220 | 2021-01-07 21:43 | 俳句

俳句アラカルト



俳句アラカルト
 清水弘一


冬眠や小さき者のいのち継ぐ

          紀子

冬眠する小さき者が生命を継いでゆく、その

小さき者たちへの愛情といたわりが詠われて

いる。



ところで、冬眠する小さき者の、者とは

一人では生きてゆくことの難しい人間をとら

え、小さき者と思いをはせて居られるので

あろうか?。



また、昆虫や栗鼠などの小動物から人間まで

を含めて、小さきものを擬人化して、小さき

者の対象ととらえているのであろうか?



はたまた、恐竜時代から生き延びた哺乳類が

冬眠をして、世代をつないできたであろう

ことに対する思いを巡らせて小さき者と

とらえたとも解釈できる。



コロナウイルスの世界の感染者数は間もなく

8千万人になんなんとしている。



民族紛争や政治・宗教対立の犠牲による小さ

き者の不幸な方々も多く居られる。



小さき者の人間は限りない戦禍や疫病禍も

くぐり抜けて来た。小さな蝶や昆虫や小動物

たちも人間も、その時代を乗り継ぎ・乗り越

繁栄して来た。



知恵と勇気と思いやりのある人間同士である

なら、いかなる困難にもめげず いのちを繋い

でいって欲しいと作者は念じている。了。






# by kodaira220 | 2020-12-21 17:07 | 俳句

俳句アラカルト

  
 俳句アラカルト   清 水 弘 一


足利俳句会11月より3句を講評しました。
高得点句でも特選句でもありませんでし
  たが、心うたれる大好きな句です。



  桐は実に伏せて久しき鉄の鍋   

松田 湯沢セウ


 春に薄紫の花をつけていた枝に鈴なりの実が

ついています。

女児が生まれると桐の木を植えて、お嫁に行

く時に桐のタンス を作り持たせると聞いて

おります。桐の花が実になる季節の移り変わ

り、幼木が桐材になるまでの期間が思い浮か

びます。

台所の片隅にそっと伏せられて久しい鉄の鍋

家族への思い出と愛情が伝わって来ます。


 

  適温は四十二度の柚子湯かな  

若草 菊地緋沙


 

 柚子は香り良し、絞ってよしと冬の味覚を

引き立てる。

 その柚子が採れたのか、頂いたのかあり難く

柚子湯にする。

 その至福の柚子湯の適温は四十二度である

と断定する。

 何ともうらやましく、こちらまで温かさが

伝わって来る。

 豊かな日本の風土ならではの慣習を世界中

 の人々に自慢したくなりました。



歳は取る捨てる歳やも

あり無しや  

江川 齋藤ゆみ

歳は取るも捨てるも自由である。歳月は人を

待たないが、やむなく取らされている訳では

ない。

移りゆく季節の中で、人は生きる目標を見定

め、老いにも恐れず毅然と向き合う。

詩人サミエルウルマンは「青春とは人生の

或る期間を言うのではなく、心の持ち様を

言う。創造力・意志・情熱 こういう様相を

青春と言う」と述べている。

無季である俳句の奥深さを味わう。

     了。






# by kodaira220 | 2020-11-27 10:48 | 俳句


足利高等学校の百周年の機に両毛新聞社では「卒業生からの手紙」という投稿を募集しております。
そこで下記の拙文が令和2年10月15日(木)に掲載されました。


50歳からの「キリマンジャロ」登山    清 水 弘 一


50歳のある日、同期会の席で、「キリマンジャロに登る」という野太い声が聞こえて

来る。

ヘミングウェイの著書「キリマンジャロの雪のあの山かと聞くと「そうだ!」

と足高山の会の会長 大塚長芳が得意顔でうなずく。


 酔った勢いとは恐ろしい、キリマンジャロの女神が乗り移ったのか 

「私でも登れるか」と聞いてみた。



「お前も大丈夫だ」の一言で、本気でジムに通い、胴回りを83cm、

体脂肪を19にま落とした。全くの素人ゆえに、山の道具一式の

購入の選別から逐次丁寧な指導を受け、装備と外見だけは整った。

山登りの手始めは富士山、富士山、これまた富士山。

四度目はいよいよ本番である。



タンザニアー南緯一度。ナイロビからマラングゲート(国立公園管理事務所)

1855m立つ。総勢17名、登山隊 隊長は武藤浩章、副隊長谷津範之、

脇の堅固は大塚長芳、窪光政他のメンバー。

顧問の先生方は北川進五元校長、大川信夫、井上孝郎、齋藤芳徳の

諸先生方。



タンザニアの観光収入源の一つはキリマンジャロであることは言うに

及ばない。

海外からの登山者には山のガイド、調理のコック、荷物を担ぎ上げる

ポーター、山道で枯れ枝を切り薪にして担ぐ者も交じり、

登山者以上の人員が配置される。



湿潤たる森林帯を抜けると、ウスユキ草仲間(エーデルワイズ)の

連なる草原帯、時折の寒風の砂れき帯、岩石を巻いて山頂

ギルマンズ・ポイント5,685mに登頂。

山頂の標識の前に、足高山の会の旗を掲げ記念撮影し,寒冷の中

手袋越しに握手を交わす。雲海の水平線の上部を茜色が差し始め、

旭日が黎明の時を告げる。



次のウフルピークへの同行を促されるが、山頂の一角に到達した

登山初心者は残り、後続を待つ。最高峰ウフルピーク5,895m

登頂し、氷河帯を踏みしめたのは 4であった。



こんなエピソードもある。標高5000m付近まで一列縦隊で登って

来たが、疲労と寒気に体力が奪われ、少しずつ隊列が乱れ始めた。

そんな時「隊を分けよう、早く登れる者は先に登ってもらおう、

残りはゆっくり行こう。」と大塚から提案された。

板橋・出島・清水・牛窪・大井が先発隊として先行した。



しばらくすると、後続隊のH君が突如「暗く道がよく見えない」

と訴え出た。高山病の一つの症状である。大塚・谷津・ガイドの

ングマの相談結果、直ぐに下山して医師の診断が必要と判断された。



直後、大塚が「俺が一緒に降りる」と宣言するや否や、H君を

かばいつつ、ングマと下山して行った。

頂上5,685mから数百メートルの地点であった。



登山道の折々には、井上先生から野生のカメレオンを手のひらから

見せて頂いたり、高山植物の名前の多くを解説して頂いた。

北川先生からは夜ごとアフリカの天空を彩る星座や南十字星、

白鳥座の北十字星などの懇切な野外授業を受ける。



又、キリマンジャロ登山の留守役として、白澤滋民先輩が地球の

裏側から衛星電話口でリアルタイムのホットラインで見守った。

幅広い年齢層の参加者がそれぞれに守備位を守り、

アフリカの最高峰に登頂出来たことは、足利高校 並びに

北川進五元校長先生のイズムが脈々と受け継がれているあかし

あった。   了。







      


# by kodaira220 | 2020-11-01 15:34 |

俳句


俳句アラカルト

足利俳句会の作品




冬ぬくし針穴逃げし木綿糸   茂木喜子

針穴に糸を通す経験は老若男女を問わず、有るで

しょう。小さな針の穴をめがけて糸をさしますが

なかなか思う様に通ってくれません。

通ってくれない糸を針穴を逃げたと表現しますと

糸と針への慈しみが感じられます。絹糸でなく

木綿糸そして冬ぬくしの季語が優しく包みます。


SLに乗りたしひえの穂に夕日   木村房子

稲の中に頭一つ高く、あるいは黄金色に色づく稲の

周りや、休耕田に稗の穂が茂り夕日を浴びて輝いて

います。その様な情景を見ますと、SLに乗った時

の楽しい思い出がわいて、またもう一度煙を吐く蒸

気機関車に乗って見たいとの思いにかられます。東武

鉄道のSL大樹は鬼怒川温泉駅を好評運行中です。


木犀の蒔絵踏まずに遠まわり  寺岡トリ子

金木犀・銀木犀の香りは魅惑的である。

木犀の花が落ちて、いちめん黄金一色である。

その散り敷きつめられた金木犀の花を高蒔絵や

漆黒の輪島塗に振りかけた金粉の模様に感じ取

る喩えの妙に感じ入る。造花の神が描いたであろ

う木犀の蒔絵であれば踏むことは叶わない。

                   了。






# by kodaira220 | 2020-11-01 12:37 | 俳句