俳句アラカルト
2017年 12月 05日
俳句アラカルト 清 水 弘 一
たちあがるものに馬の子みちのくは 遠山陽子
‐第五十四回現代俳句全国大会‐ 2017-53
俳聖芭蕉がよみがえり、3.11の後みちのく
の人々に対する復興への願いの挨拶句を
詠んだと思わせる。日本中の人々の祈り
が素直に述べられている。
何ものにもとらわれない馬の子のように
力強く復興にまい進して頂きたいとの願い
である。原発の除染の問題から自宅に帰れ
ない家庭も多々あり、家族との別れの喪失
の痛手の癒えない方々が多く居られますが、
草原を走り回る馬の子のように先ずたち
あがることから始めて頂きたいとの
メッセージです
日本国中、環太平洋火山帯の国々、五大陸
全てが天候や地震災害等に見舞われている
が、東北地方の災害の頻度が多く、被害が
大きい様に思われる。
「みちのく」はとてつもない歴史がある。
マンモスと古代人は数万年前ベーリング海峡
を渡って来た。青森の三大丸山遺跡や陸奥湾
の縄文遺跡、久慈市の琥珀の装身具は日本列
島の表玄関であった証左であり、文化の発生
・伝播の時期も長かったことを伝えている。
約二千年の弥生時代の後、夷などと呼ばれ
た阿弖流為達が歴史に登場したが、当時の都人
に劣らない歴史を持っていた可能性が高い。
その阿弖流為たちは馬の放牧を行い良馬を量産
した。後の伊達政宗は騎馬隊の精鋭を擁し日本
統一のロマンを持っていた。藤原源氏の末裔で
ある奥州藤原氏の栄華は義経と共についえて
しまった。みちのくの言葉の響きから東北地方
の歴史絵巻が次々と思い起こされる。
さて己の力で立ちあがった子馬はやがて
みちのくの草原を雄々しく走り回る。
家族を作り群れをなし明日の末来に向けて
着実な歩みをきざんで行く。 了。