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by kodaira220

運慶展



   

  運慶展 東京国立博物館
                清 水 弘 一



運慶は鎌倉初期の彫刻家。
今秋の「運慶展」には日本国中の作品
37
以上が展示されている。運慶は生没年が不詳
とされている。作品の完成度の高さ、発想と
表現力の多様さに圧倒される。

   ※運慶関連年表では1150年頃生れ、
       1223年没するとある。


運慶は仏師のジャンルに入る。彫刻という
作品でなく阿弥陀仏や観世音菩薩の御仏その
もの一軀づつを彫りだしている。

各種の樹木から彫りだしているが、彫りだ
している内に仏達の宗教心と融和して、人為
を越えた精妙さや仏心が乗り移り仏像に魂が
込められて行くと感じらる。

運慶の技量と思想が神意に近づきつつある
のではないかという思いが起る。
京都六波羅蜜寺の「地蔵菩薩坐像」の内部
には経文がぎっしり収められております。
仏師の畏敬や祈りと共に寺院の僧侶たちの願
いも仏像には託されていたことを知る。

奈良興福寺の「仏頭」は仏陀の顔大ぶりの目
鼻立ちで生気に満ち、現世の全てを見通す強
い意志が受け止められ、運慶自身の気持ちの
発露が伝わってくる。

栃木・光得寺と東京真如苑真澄寺の大日
如来座像
2軀は運慶作との表示はなく、
鎌倉時代作とだけ表記されている。
真如苑の坐像には栃木県鑁阿寺縁起と推測
されると意味深に説明されている。
ニュ-ヨークのオークションで高額の落札と
して紙上を飾った坐像である。

京都高山寺に可愛らしく置かれていた「子犬」
のレプリカでない本物を鑑賞する。
また、同寺の「善妙神立像」からは唐三彩を
思わせる色彩が往時の高山寺の明恵上人の華
やぎまで思いが馳せる。

運慶晩年の作 神奈川・光明院の「大威徳明王
坐像」は小作品で破損の部分が見られたが、
深い慈悲を感得する渾身の作であった。

運慶一門の慶派の四天王立像や鎌倉時代の多く
の仏像にも触れることが出来た。運慶を始めと
する鎌倉仏師の精神の高潔さに圧倒される
至福のひと時であった。       了。







by kodaira220 | 2017-10-29 11:10 | 美術展