運慶展
2017年 10月 29日
運慶展 東京国立博物館
清 水 弘 一
運慶は鎌倉初期の彫刻家。
今秋の「運慶展」には日本国中の作品37軀
以上が展示されている。運慶は生没年が不詳
とされている。作品の完成度の高さ、発想と
表現力の多様さに圧倒される。
1223年没するとある。
運慶は仏師のジャンルに入る。彫刻という
作品でなく阿弥陀仏や観世音菩薩の御仏その
もの一軀づつを彫りだしている。
各種の樹木から彫りだしているが、彫りだ
している内に仏達の宗教心と融和して、人為
を越えた精妙さや仏心が乗り移り仏像に魂が
込められて行くと感じらる。
運慶の技量と思想が神意に近づきつつある
のではないかという思いが起る。
京都六波羅蜜寺の「地蔵菩薩坐像」の内部
には経文がぎっしり収められております。
仏師の畏敬や祈りと共に寺院の僧侶たちの願
いも仏像には託されていたことを知る。
奈良興福寺の「仏頭」は仏陀の顔大ぶりの目
鼻立ちで生気に満ち、現世の全てを見通す強
い意志が受け止められ、運慶自身の気持ちの
発露が伝わってくる。
栃木・光得寺と東京真如苑真澄寺の大日
如来座像2軀は運慶作との表示はなく、
鎌倉時代作とだけ表記されている。
真如苑の坐像には栃木県鑁阿寺縁起と推測
されると意味深に説明されている。
ニュ-ヨークのオークションで高額の落札と
して紙上を飾った坐像である。
京都高山寺に可愛らしく置かれていた「子犬」
のレプリカでない本物を鑑賞する。
また、同寺の「善妙神立像」からは唐三彩を
思わせる色彩が往時の高山寺の明恵上人の華
やぎまで思いが馳せる。
運慶晩年の作 神奈川・光明院の「大威徳明王
坐像」は小作品で破損の部分が見られたが、
深い慈悲を感得する渾身の作であった。
運慶一門の慶派の四天王立像や鎌倉時代の多く
の仏像にも触れることが出来た。運慶を始めと
する鎌倉仏師の精神の高潔さに圧倒される
至福のひと時であった。 了。